インタビューを本にした、「『大地の子』と私」を読んでいる。
小説は読んだことはないが、ドラマは中国のネット映像サイト

是非見たいと思っていたところ。
いわゆる中国残留孤児の来日から数年後、中国当局から農村や政府機関の取材が
許されなかった1984年頃に事前調査を始めた時のご苦労がつづられている。
80年代の閉塞した中国の様子が伝わってきて、ありそうありそう

と思いながら読んだ。実際の残留孤児が両親とはぐれる話を聞き、小説の主人公の
インスピレーションをもらった話や、故胡耀邦総書記の葬儀に参加しようと北京に駆けつけ、
天安門事件が起こる数日前の学生デモを目撃する話、江西省へのお墓参り、など
電車の中で読んでいたのに、涙が出て

「大地の子」はNHKが中国中央電視台(CCTV)の日中合作でドラマ化し、日本では
大好評のうちに放映されたものの、中国でタブーとされている文革をリアルに描いたり、
実在の中国共産党内部の政略をモデルとした箇所などが問題になったようで、
中国では放映されるかどうか、わからなかったそうだ。
確かに、この作品を中国で見た覚えはなかったが、今や、
CCTVが正式に放映しなくてもネットで見られる
時代になったのだ。そして中国のサイトの感想欄には、感動した、良い話だ、泣いた、
というコメントばかり。「どうしてこんな良いドラマをテレビで放映しないのかな」
というコメントもちらほらあった。ドラマの結末については、
「日本のお父さんを中国に呼んで一緒に住めばいいのに、私だったらそうする」という、
いかにも親思いの中国人らしい意見も。中国人の子たちはよく無邪気に、
中国好きなら移住してくれば?

外国人が(中国人と結婚する以外の方法で)中国に公式に移住するのが非常に難しい

ことをよく分かっていない。
また、山崎豊子氏が、中華民族の滅亡につながる重大な侵略というなら、アヘン戦争も
そうだったのに、なぜいつまでも日本だけを責めるのですか?と
胡耀邦氏に聞いた時の答えが、
「アヘン戦争は100年前のこと、中日戦争はまだ40年しか経っていない。
実体験をした人々が生きている間は、記憶は薄れない」
だった。これが1985年の事で、あれから更に23年が経ち、終戦から
68年が経ったというのに、中国の昨今の言動を見ると戦争の記憶が薄まるどころか、
どんどん強まっているではないか。
胡耀邦の後継の江沢民が、反日教育を進めるすることにより、記憶の自然消滅どころか
逆に若い層に反日派が増していくことになろうとは。
1987年に胡耀邦氏が失脚しなければ、事態は違ったのか。
つくづく日中関係は一進一退だな、と思う。
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